日本が韓国と国交断絶ができない訳とは? 徴用工の最高裁判決から考える日韓関係

経済
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第二次世界大戦期における韓国人徴用工の裁判が韓国の最高裁判所(大法院)で行われ、新日鉄住金に1人当たりおよそ1000万円の賠償金支払いを命じる判決が出されました。
日本と韓国は、第二次世界大戦以前の両国間の問題について1965年に『日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(通称:日韓基本条約)』を結んでおり、この条約の中には日本が韓国に総額8億ドルの経済援助することで、韓国側が個人も含めて今後一切の請求権を放棄することも書かれています。
今回の判決はこの日韓基本条約に反するものであり、日韓関係の根幹を崩しかねない大問題となりかねません。
また、つい先日も済州島での国際観艦式で自衛隊の旭日旗掲揚が問題視され、結局自衛隊は参加を辞退するに至りました。
このような日韓関係を著しく悪化させかねないような懸念が度重なり韓国側から発せられ、日本のネットでは『韓国と国交断絶するべきだ』などという意見も多くなっています。

しかし、日本と韓国との関係はそんなに単純な話ではありません。
以下の2つのランキングをご覧ください。

【2017年日本の輸出額ランキング】
アメリカ:15兆1100億円
中国:14兆8800億円
韓国:5兆97億円
台湾:4兆5500億円
香港:3兆9700億円
タイ:3兆3000億円
シンガポール:2兆5400億円
ドイツ:2兆1200億円
オーストラリア:1兆7900億円
ベトナム:1兆6800億円

【2017年日本の輸入額ランキング】
中国:18兆4500億円
アメリカ:8兆900億円
オーストラリア:4兆3600億円
韓国:3兆1500億円
サウジアラビア:3兆1100億円
台湾:2兆8400億円
ドイツ:2兆6200億円
タイ:2兆5500億円
UAE:2兆3200億円
インドネシア:2兆2300億円

以上の数字を見ればわかる通り、日本は韓国との貿易でかなりの規模の黒字を生んでいます。

日本は韓国との貿易において1965年の国交正常化以降52年連続で黒字が続き、現在の韓国は日本にとってアメリカに次ぐ規模の貿易黒字国になっているのです。
事実として、韓国の工業製品は日本企業の部品がないと成り立たないですし、日本企業は韓国企業に部品を売ることで多額の利益を得ています。
早い話、日本と韓国は少なくとも経済的にはWin-Winな関係を築いていると言えるのです。
特に日本人は韓国の商品をあまり買わない傾向が強いため、世界を席巻している韓国メーカーの家電も日本で見かけることがほとんどなく(見かけるのはサムスンのスマートフォンやLGの有機ELテレビ程度)、日本で韓国車を見かけることなどは奇跡に近いような確率でしかありません。
つまり韓国は、日本であまり商売ができずに貿易赤字が膨らんでいるという状況が見てとれます。

更に近年成長が著しい日本の観光業でも、韓国は無視できない存在となっています。
2017年の訪日外国人は2869万1000人でしたが、その内714万200人が韓国人で、この数値は最大の訪日外国人を誇る中国人の735万5800人と同規模です。
中国と韓国の人口差を考えれば、韓国人が日本を訪れる率は極めて高いわけで、韓国は日本の観光業においても相当の経済効果を生んでいます。
かつては物価の違いから、韓国から日本に来る人より日本から韓国へ行く人のほうが多かった時期もありますが、昨年の訪韓日本人は223万人と訪日韓国人の3分の1以下の規模でしかありません。

以上のような状況を考えると、日本にとっての韓国とは、クレームが多いが商品をたくさん買ってくれる常連客のような存在と言えます。
商売をする相手としてあまり気分はよくないかもしれませんが、利益を考えたら関係を切るわけにもいかない相手と言えるでしょう。

そしてもう1つ外せない問題として、韓国の後ろには北朝鮮というクレーマーどころの騒ぎではない厄介な相手がいるということも忘れてはいけません。
韓国がこの厄介な相手に対する日本側の防壁にずっとなってきたという歴史があるからこそ、日本は韓国のあり得ないような政治的な主張にも耐えてきた経緯があるわけで、そのため当然に国交断絶なんてできませんし、することで得られる利益は失う損益と比べてあまりに小さいのです。

しかし、今後もこのような状況が続くかは不透明です。
韓国と北朝鮮との関係は今年に入ってから急激に変わってきていますし、今回の徴用工の裁判結果が韓国における日本企業の経済活動にまで及ぶ可能性も考えられます。
万が一、日本の韓国に対する貿易黒字がなくなれば、日本にとって韓国はただのクレーマーでしかなく、本気で韓国と国交断絶なんてことを主張するような政党が日本の国会で議席を得ることになっても何ら不思議はありません。

今後、日本政府及び日本人は、韓国からのクレームの大きさと得られる利益を天秤をかけ、両国間の正しい関係を見定めていかなければならないことになるでしょう。

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